中学校の友人と会った。
最後に会ったのは恐らく5年以上も前だ。
その後、中学の同窓会(行ってない)の連絡をわざわざくれたのを最後に連絡すらとっていなかった。
わたしは中学生当時その子のことがかなり好きだった。
恋愛的な意味ではない。
だけど、ただの友達としての好きではない、アイドルに抱く憧れのようなものがあった。
中学の頃、クラスのオタクグループの子に「○組にすごく絵の上手い子がいる」といって引き合わせてもらったのがはじまりだった。
絵が上手かったし、肌や髪の色素が薄くて、かわいかった。
絵が上手いことは当時オタクだった私にとってはかなり重要なステータスだったし、典型的な眉毛ボーボーキモオタ女にとってはかわいいオタクという存在がとてもキラキラしたものに感じられた。
放課後毎日会いに行って、絵をねだった。
そして段々と仲良くなって、毎晩遅くまで好きなCPや萌えについてメールをしていた。
受験のときには親の圧でノイローゼのようになっていた彼女に夜電話したり会いに行ったりした。
関係が、というかわたしの彼女への感情?が変わりはじめたのは高校のときだったと思う。
別々の高校に進学したため会う頻度が激減した。
彼女は美術系の高校へ行った。
そして、年頃の女の子らしくメイクやおしゃれを覚え、メキメキと垢抜けた。
元々かわいかったのに、たまに会うたび更にかわいくなっていた。
また、お互いのオタクとしての趣味も段々と遠くなっていった。
中学生の頃は同じ漫画やゲームが好きだったのが、インターネットに触れることで知らない世界を知って、お互い新しいものを好きになった。
彼女が好きなものはやはりオタクジャンルの中でもハイセンス、高尚なものに感じられたけど、わたしは興味を持てなかった。
憧れや好きだった気持ちは、崇拝や嫉妬や色んな感情をまぜこぜにして、とりあえずなんだか汚ならしいものになっていた。
というか、一人の友達に対してここまで考えるということがそもそもヤバいのかもしれない。
ただ、彼女に嫌われたくないと常に思っていた。
だからおしゃれやメイクもその子を真似るようにはじめた。うまくいかなかった。
会うたび、自分の服装が気になる。ダサいと思われていないか。
共通の話題が減り、話すことがなくなった。何を話せばダサくないのか。嫌われないか。
こうして段々と会うことがつらくなり、一方的に連絡を絶った。
連絡を絶って気づいたけど、会おうとか連絡をしていたのはいつもほぼ私からだった。
一人で悲しくなった。
そして26才になった今、会おうと連絡をとったのも、また私からだった。
明確な動機はない。ただ、ふと、近頃彼女は元気かなあと思い出すことが何度かあった。
長いこと離れていたし、わたしはもうオタク活動を辞めてしまったので、今ならシンプルな気持ちで会うことができると思った。
当日はとても緊張した。ネットで知り合った人と初めて会う感覚に似ていた。
彼女は変わらずかわいく、わたし同様大人になっていた。
結論から言うと、楽しくはなかった。
お酒も入っていたし、何よりお互い大人になったから、会話は以前よりも弾んだ。
会話で5年以上の空白をあらかた埋めて、その後は大人らしく仕事への愚痴、世間への文句で酒を呑んだ。
気まずい雰囲気になどなっていない、最後まで笑って別れた。だけど、別れの最後の最後まで、一つの線を、薄い一つの膜を確かに感じた。
多分、あれがA.T.フィールドだと思った。
まさかこの現代においてA.T.フィールドという言葉で心の壁を表現すると思わなかったけど、それが一番しっくりきた。
彼女は会話の中で何度か「とにかく他人と触れ合いたくない」「人間が嫌い」と言った。
わたしは勝手に寂しくなった。
勝手に欲しがっていた見返りはこの人にはもらえない。
ここまで自意識たっぷりに書いてきたが、これ、つまり相手に嫌われてるんじゃね?という疑問が湧くだろうと思う。
それがわからない。彼女が何を考えてるか、わからなかった。それは思えば昔からそうだった。
いっそ直接聞けばいいとも思うけど、それを阻むのがA.T.フィールドなのだった。
彼女にまた会うことはあるだろうか。
向こうから連絡がくることは多分ない。
また会うとすれば、わたしがぼんやりと会いたくなってしまって連絡してしまうときだろう。
人を好き。好きな人。友達。恋人。
何なんですかね。わかりません。