今月に入ってからもう2週間経つけど、なにかおかしい気がする。
プツンと糸が切れたかのようになにもやる気が起きず、食べて仕事に行って寝ることしかしていない。それすらしんどく、ずっと横たわっていたいと思う。
なにか情報や娯楽をインプットしたり、誰かからのラインに返信をしたり、そういうことすら本当に億劫で苦痛に感じる。ごめんと思う。
減薬のせいなのか、季節のせいなのか、ホルモンのせいなのか、よくわからない。
本当におかしいのかどうかも自信が持てない。どうしたんだろうな。
冬になったのでハンドクリームを買って、数日後には失くした。
わたしはお香の匂いなんかの所謂オリエンタル?な匂いが多分すきで、使っているハンドクリームはそんな感じのやつ。ローズマリー、レモングラス、パチュリーの香りがブレンドされている。
ローズマリー、レモングラス、パチュリーって呪文みたく唱えたくなる。パチュリーの功績が大きいと思う。
ローズマリー、レモングラス、パチュリー。ローズマリー、レモングラス、パチュリー。
わたし自身はとても気に入ってるけど、職場ではあまり評判がよくない気配がする。隣に座ったパートさんたちから「漢方みたいな匂い」「高尚な書道家みたいな感じ」という褒めのニュアンスではなさそうな評を受けた。
匂いテロをするのは本意ではなく、でも乾燥対策というよりはすきな匂いをかいで仕事中気分転換したいという目的があるので、控えめに使うよう心がけていた。
去年使い始めて、春にちょうど使い切ったので今年ので2本目。
ハンドクリームを失くしたことにはすぐ気づいたし、どこで落としたかもわかっていた。
その日は普段使わない小さなトートバッグで仕事に行ったら、少しの荷物でトートバッグがパンパンになった。トートバッグにファスナーなどはついていない。
仕事が終わると急に強めの雨が降ってきて、割と急いで帰路についた。いつも通る横断歩道でなにか落としたような気がして、でもなぜか気のせいにしてよく確かめもせずそこを通りすぎてしまった。そして朝、ハンドクリームがどこにも見当たらない。
まだ新品同然のそれが、運良く道端に転がっていることを祈りつつ仕事へ向かった。そして、問題の横断歩道を通り過ぎたとき、地面にはぺちゃんこになったハンドクリームのチューブらしきものが見えた。
心が弱っていたからだろうか。その光景が一日中頭から離れず、とても激しく落ち込んだ。
「オツベルと象」の、オツベルがくしゃくしゃに潰れていた一節を思いだした。
はあ。
やっぱりあれは見間違いかもと淡い期待を抱き、帰り道、横断歩道でぺちゃんこになったそれをとうとう手にとった。
それは絵の具のチューブを大きくしたような、アルミのチューブ(だったもの)。押しださなくても出てくるくらいにパンパンに詰まっていたクリームはもう少しも残っておらず、プレス加工されたように板状になっていた。
ぺらっと裏返すと少しだけ付着したクリームから、かすかにわたしのすきな匂いがする。
一夜の間に、どれだけのタイヤがこの上を通ったんだろうか。「高尚な書道家のような」匂いを踏みつけたタイヤはいまどこを走っているのだろう。
ハンドクリームはその日のうちにアマゾンで再注文した。
みなさんも、ファスナーなどのないバッグにパンパンに荷物を詰めるときはふとした拍子に飛び出さないようご注意ください。