前回書いたデマド(猫)との再会をきっかけに、わたしはどこか吹っ切れすごく清々しい気持ちで日々を過ごすことができていた。
さながら悟りを開いた僧侶のように、心はかつてないほど穏やかに思われた。
しかしそれは勘違いだったんだと思う。
わたしはまだまだ悟りを得てなどいない。俗世に生きる人間たちのなか、さらにそこからレールを外れてしまった人間のままだった。
穏やかだったのはただ単に嫌な出来事がなかったからだったのだ。
無風であっただけ。そして台風がきた。
わたしを襲った台風とは、その実とてもシンプルなものだった。
少し他人に冷たくされた。それだけだった。
改めて書くと単純すぎる。
だけどそれだけのことで、精神と感情は荒れ狂ってしまった。
はじめは「冷たくされた」「嫌われてるかも」とか、起こった事象に対して悲しかったり怒ったりする。
そのうち、「レールを外れてしまった自分」「諦めたはずなのに欲を捨てられない自分」を責めて、ますます悲しくなる。
もうこんなことを何度やってきたんだろうか。
おそらく多くの人もやっていることだと思うし、特段記事にして書くようなことでもないかもしれない。こんなのいちいち記事にしてたらキリがない。
でも、今回はわたしにとって自分でも驚くほどの衝撃があった。
なにしろわたしは悟りを得た気持ちでいたのだ。かつてないほどの穏やかさ、なにか大きな基盤、軸を得たような気持ちでいた。
しかし初めに書いたようにそんなものはなかった。わたしはわたしに騙されていた。
諦めたと強く思っても諦められない。
絶対にやり遂げると決めたことを放棄する。
大好きと信じていたものにすぐ飽きる。
とにかくわたしはわたしを裏切ってばかりいる。わたしは決めたことが守れないし、そもそも性根がかなりの気分屋だ。それがわかっているのにそのときの気分を信じてしまうし期待してしまう。
わたしは何回裏切られても結局わたしを信じてしまう。
これからもこんな自分とやっていかなくてはいけない。途方もないなと思う。
涅槃はどこか。